導入前の課題(個人、組織)
長年にわたり同じブランドでありながら国内各地域に独立した会社組織を持ち、地域ごとに運営していたために横串が通っていなかった同社。しかし、社会情勢の変化に対応して競争力を高めるため、一つの組織に統合することになりました。人事部においても、各組織から社員が集まりこれまで各社のやりかたでバラバラにやっていたオペレーションも一元化・統一することになりました。全社としてのビジョンが示され、それを元に人事部も運営していく必要があったのです。
この統合を前に、各地域の人事トップだったメンバーに加え、今後の方向性を考えたときに必要だと思われる人材を社外からも複数採用していました。これまで相互の交流の機会がほとんどなかったため、突然現れた全社ビジョンに対する捉え方も各社、各メンバーで大きく異なっていました。お互いに話をすることについて抵抗はなく、仲間として受け入れようという姿勢はありましたが、前提となる組織としての方向性や捉え方には大きな違いが生じていたのです。その部分について話をすると、話が噛み合わず、居心地の悪い空気が漂うことが続いていました。
そのため、一体感もなく、シナジーも発揮できていない状態でした。
優秀な人材集団ゆえの課題が
各メンバーは、それまでに顕著な実績を上げた優秀な人財であり、自身のスタイルや仕事に対してこだわりを持っていました。しかし、自分の考えを相手に押し付けることをしない一方で、相手の話に耳を傾けようという姿勢も欠如していたのです。
メンバーを集めてのワークショップを実施
わたしはこの課題を解決するためにオフサイトでのワークセッションを実施しました。
まずはアイスブレイク、チームビルディングを行い、相互の意見を尊重しつつも、率直に意見交換をすることができる空気を作りました。
そして組織のミッションに対して認識を共有するために、メンバーそれぞれに自分の解釈を発表していただきました。その中で、質問、疑問をぶつけ、全員がお互いの意見を完全に理解するまで時間を確保していきました。
その後、チームのミッション、ビジョン作成を行いました。個人で将来のあるべき姿を描き、それをいくつかのグループに分かれてグループごとに議論を重ねて作成し、各グループに発表をしていただきました。それをまとめ、チームとしての方向性ということで見える化を行っていきました。
ワークショップ中に目に見える変化が
ワークショップ後半で、どのような組織を目指していくべきなのか、その中にあって人事部はどのような役割を担っていくのかを考え、小グループに分かれ、それぞれにチームとしてのビジョンを検討していただきました。そのときにメンバーから「言葉や表現は違うけれども、みんなが同じビジョンを持っている。人事部としてのあるべき姿は皆同じだということに気づいた」とのコメントがあり、そのあたりから急激に一体感が醸成されました。
ワークショップ開催後、数週間してからの人事部長のコメント
「ワークショップのあと、これからの変革を見据えたときに、人事部がチームとして一枚岩でなければならないとの自覚が高まった。そのため、以前はお互いの意見に関心が低かったが、しっかりと話しに耳を傾けるようになった。そして、将来のありたい姿を自分たちで明確にしたので、以前にも増して真剣に業務に向き合うようになり、建設的な議論がかわされるようになった」